はなして!
いま、もうすぐ8時半になろうとするころです。
ついさっきまで通学路である我が家の前の道で。
登校を嫌がる男の子が、お母さんだか先生だか分からなかったのですけど女性と攻防をしていました。
ずっと泣き叫んで。
「はなして!はぁなぁしぃてぇぇ!!」
と20分くらい動きませんでした。
あと5分ほど歩けば小学校に着く、という距離です。
女性としてはなんとか男の子をなだめて早く学校へ入れたいところでしょう。
最初はやさしく諭していたのですが、やはり次第に声も荒げがちになって…
そのうちに大人がひとり加勢に入りましたが、男の子は声を振り絞ることをやめず、諦めません。
ずっと、ずっと、
「はなして!はぁなぁしぃてぇぇ!!」
と繰り返すばかりで落ち着く気配がありませんでした。
あまりの嫌がりように不憫な思いが湧きましたが、あと少しで小学校……
大人たちの心情も分からない訳ではないので、男の子が早く落ち着くことを祈りました。
しかし、いつまで経っても泣き叫び、嫌がり。
私は辛くなり、思わず目を瞑り耳を塞いでうずくまりました。
そして、それまでは双方が穏やかになるように祈っていたのですが、
男の子の叫び声が頭にこびりついて、もう男の子の幸せだけを願うしかなくなっていたのです。
すると声がやみ、姿が見えなくなっていました。
それからすぐ、です。
それまで私がどんなに祈ったり、聞いたりしても黙っていた後ろさん達が、
「大人は自分の都合で行かせようとしているだけだからな……」
とだけ言いました。
え?と思い、どういうことかと考える間もなく、再び男の子の泣き叫ぶ声が。
家の隣の建物で姿が消えただけで、あまり進んでいなかったのですね。
私はもう、迷うことなく"男の子だけ"の幸せを祈りました。
そうして1、2分後には男の子を何とか学校へ行かせることが出来たようで。
車の走行音と、少しの間普通にやり取りをしている人達の声が響く、いつもと変わらぬ生活音に戻りました。
これは、
何かしら私に、考えを促すように示す出来事のように思えました(;´-`)